ホテルは増えているのに「泊まれない」のはなぜ?札幌の宿泊不足と「売り止め」のウラ側

最近、札幌の街を歩いていると、新しいホテルが建ったり、街中の老舗ホテルが綺麗に生まれ変わったりしているのをよく見かけませんか?

2024年以降、外資系の高級ホテルや大規模なビジネスホテルが次々とオープンしており、数字だけ見れば「札幌のホテルの部屋数」は確実に増えています。

それなのに、10月末のSnow Manをはじめとする大人気アーティストのライブや大きなイベントがある週末になると、

  • 「ホテルの料金が普段の何倍にも高騰している…」
  • 「どこを探しても満室で予約が取れない!」

といった困惑の声をよく耳にしますよね。

実際にJR北海道の発表(2026年9月10日ニュースリリース)を見ると、10月下旬から11月にかけて、以下のように大型コンサートが集中する日に合わせて札幌発・旭川行きの臨時特急列車(カムイ・ライラック)が夜遅い時間帯(21:30~23:16発等)に急遽設定されています。

jr北海道ニュースリリース
2026/9/10 JR北海道 News Release

★臨時列車が走る日のコンサート日程

・10月23日:Mrs.GREEEN APPLE

・10月24日:Mrs.GREEEN APPLE / Number_i

・10月30日、10月31日、11月1日 SnowMan

・10月31日:マカロニえんぴつ

・11月14日:稲葉浩志ソロツアー

・11月14日、15日:YOASOBI

札幌市内に泊まりきれないファンや観光客のために、旭川方面などへ夜遅くに臨時列車を走らせて対応することが常態化しているのです。(岩見沢 > 美唄 > 砂川 > 滝川 > 深川 > 旭川 に停車)

「これだけホテルが増えているのに、どうして宿泊不足が続いて臨時列車まで出るんだろう?」

実はこの違和感の裏側には、単に「部屋が足りない」というだけではない、札幌という街ならではの深い理由があったんです。

雨の大通公園も美しい
目次

理由①:普段は足りているけれど…「イベントの重なり」で一気にあふれ出る

「札幌はいつもホテルが足りないの?」と聞かれると、実はそうではありません。

年間の平均で見ると、平日やイベントがない時期であれば、市内中心部でも十分にお部屋の余裕があります。

それなのに宿泊難が叫ばれる最大の理由は、「特定の数日間に、全国から人が一気に押し寄せる現象(需要スパイク)」が激しくなっているからです。

いまの札幌は、海外からの観光客(インバウンド)がたくさん訪れていることに加えて、ドーム級の大規模ライブやプロスポーツ、大型の学会などが毎週末のように開催されています。

平常時であれば今のホテル数で十分カバーできるのですが、たとえば「Snow Manのような超人気アーティストのコンサート」と「秋の観光シーズン」、そして「ビジネス需要」が同じ週末に偶然重なってしまうと、街全体の受け入れ能力をあっという間に突き破ってしまうのです。

かつては閑散期(ヒマな時期)があって全体バランスが取れていたのですが、今は1年を通してベースの観光客が多いため、大型イベントが重なった瞬間に「街から一瞬で部屋が消える」という状態になってしまいます。

💡 札幌市内のホテルを探している方へ

イベント日は中心部から埋まっていきますが、直前のキャンセル枠や少し離れたエリア(新札幌・小樽・旭川など)なら空室が見つかることもあります。最新の空き状況は以下からチェックしてみてください。

テレビ塔と噴水
テレビ塔と噴水

理由②:建物はあるのに「売れる部屋」がない?人手不足の切実な現場

「需要が増えたなら、ホテルにある部屋を全部満室にすればいいのでは?」と思うかもしれません。

でも、ここに2つ目の大きな落とし穴があります。それが「現場の人手不足」です。

ホテルは建物さえ完成すれば、勝手にお客さんを迎え入れられるわけではありません。 フロントでのお出迎えや夜間の安全管理、そして何より「毎日何百室というお部屋を短時間でピカピカにする清掃スタッフさん」の存在が欠かせません。

しかし、今の札幌ではその清掃スタッフさんやサービス担当者が圧倒的に足りていないのです。

  • 稼働制限(売り止め): 部屋自体は空いているけれど、清掃が追いつかないため、販売できずに空けたままにする。
  • 受け入れ上限の設定: 今いるスタッフさんが倒れてしまわないよう、サービス品質を保つために、あえて販売する部屋数を抑える。

このように、ニュースや統計で「札幌市内に〇〇室オープン!」と出ていても、実際に私たちが予約できる「売れる状態の部屋」はそこまで増えていないというのが、現場の切実な実態なのです。

11階以上にはザ・ゲートホテル札幌by HULICが2025/12/20オープン

理由③:東京や大阪とはちがう、札幌ならではの「働き手」の事情

「人手が足りないなら、繁忙期だけ短期のバイトや派遣さんをたくさん集めればいいのでは?」と思うかもしれません。ですが、ここにも札幌特有の難しい事情があります。

東京や大阪などの大都市圏であれば、周りの県からも電車でたくさんの人が通勤できるため、必要なときに一気に働き手を集める柔軟性があります。

ところが札幌の場合はどうでしょう。

  1. 周辺の人口規模の違い: 札幌市そのものは約190万人の大都市ですが、近隣の市町村の人口には限りがあり、遠くから毎日通勤してもらうのが難しい。
  2. ほかの仕事との集め合い: 建設や物流、医療・介護、飲食店など、いま札幌のあらゆる業界で人手不足が起きています。時給を少し上げたとしても、そもそも働ける人の絶対数が急増するわけではありません。

限られた「働き手」を色々な業界で分け合っている状態なので、イベントがある週末だけ急にスタッフを何百人も増やす、という対応がとても難しいのです。

ビアガーデン

部屋数の問題ではなく、「人と都市のしくみ」の問題

こうして見ていくと、札幌で起きているホテル不足の本当の姿が見えてきますよね。

これは単に「ホテルの建物が足りない」という問題ではありません。

「短期間にドカンと人が集まるイベント都市としての魅力」と、「それを裏で支える働き手の人数」のバランスが崩れてしまっていることが原因なんです。

どれだけ新しいホテルが誕生しても、現場でお仕事をしてくれるスタッフさんの不足が解決しない限り、大きなイベントが重なる週末の「ホテル高騰」や「予約が取れない問題」は、これからも続いていく可能性が高そうです。

まとめ:札幌は「これからの日本の地方都市」の先駆けかも?

「札幌のホテルが取れなくて大変!」というニュースは、一見すると札幌だけの特殊な困りごとのように見えます。

でも実はこれ、「全国・世界からたくさんの人が集まる大きな地方都市が、最初にぶつかった人手不足の壁」と言えるのかもしれません。

これから日本全国の地方都市でも、インバウンドが増えてイベントが活発になれば、同じように「ホテルはあるのにスタッフが足りなくて泊まれない」という問題が起きる可能性があります。

札幌で起きている宿泊難やJRの臨時特急運行は、これからの日本の街がどうやって観光と人手不足に向き合っていくべきかを教えてくれる、一足お先のニュースなのかもしれませんね。


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テレビ塔と噴水

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