大通東1丁目のシンボルとして、長年多くの演劇ファンや市民に親しまれてきた「東1丁目劇場施設(旧・北海道四季劇場)」。
2025年3月末に惜しまれつつ閉館を迎えましたが、いよいよ建物の解体工事が本格化しています。
現在、現地を通りかかるとかつて数々の名作が紡がれた巨大な劇場が防音シートや足場に囲まれ、重機によって姿を変えていく様子が目に入ります。
これまで「札幌クリップ」でも何度かこの劇場の動向を追いかけてきましたが、実際に解体されていくのを目にするとやはり寂しさを覚える方も多いのではないでしょうか。
今回は、この劇場が札幌に刻んだ歴史を振り返りつつ、解体後の大通東エリアが直面している「一体再開発の足踏み状態」について、その具体的な背景を解説します。

1. 北海道四季劇場はいつできた?歴史と上演された11作品を振り返る
東1丁目の「北海道四季劇場」がオープンしたのは、2011年1月のことです。劇団四季にとって北海道内初となる「常設専用劇場」として誕生しました。
札幌における劇団四季の歴史をたどると、その原点は1991年にまで遡ります。
当時、高架化されたばかりの札幌駅前、その広大な跡地(更地)に突如として現れた黒い仮設テント。
それこそが伝説の「札幌キャッツ・シアター」でした。
このテントでのロングラン大成功が呼び水となり、1993年には全国初の専用劇場「JRシアター」が札幌駅前に誕生します。しかし、こちらも1999年に駅前再開発にともない閉館。それだけに、2011年の東1丁目での劇場オープンは、ファンにとって実に12年ぶりの嬉しい復活劇となりました。
この劇団四季の専用劇場では、2020年3月に活動を終了するまでの約9年間に、合わせて11もの作品が上演されました。
- 『エビータ』
- 『赤毛のアン』
- 『ライオンキング』
- 『マンマ・ミーア!』
- 『美女と野獣』
- 『オペラ座の怪人』
- 『キャッツ』
- 『ウィキッド』
- 『ライオンキング(2回目)』
- 『サウンド・オブ・ミュージック』
- 『リトルマーメイド』
札幌市内の小学校では授業の中に観劇を取り入れており、高学年になるとこの四季劇場へ足を運ぶ機会がありました。そのため、大人から子どもまで非常に多くの市民に馴染み深い場所となっていました。
2020年春、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、ファイナル公演の『リトルマーメイド』が千秋楽を迎えられないまま幕を閉じるという予期せぬ形での閉館となりましたが、ここで生まれた感動は今も街の記憶として残り続けています。

2. 劇団四季から札幌市へ無償譲渡。「東1丁目劇場施設」としての役割
2020年3月の閉館時、本来であれば建物は解体され、更地にして土地の持ち主に返却される予定でした。
しかし、劇団四季側が建物を札幌市へ「無償譲渡」したことで、建物は「東1丁目劇場施設」と名前を変えて存続することになりました。
札幌市への移管後は、市有施設(Kitaraなど)の改修工事に伴う「一時的な劇場不足」を補うための暫定施設として、2021年10月から一般開放されました。
市民団体の演劇ステージや、冬の風物詩である「サッポロ・シティ・ジャズ」の会場、さらに「札幌国際芸術祭(SIAF2024)」の主要会場(未来劇場)として幅広く活用されました。
コロナ禍で千秋楽を迎えられなかった『リトルマーメイド』が3年ぶりにこのステージで再演されるなど、2025年3月31日の完全閉館まで、足掛け14年近くにわたり札幌の文化発信を支え続けてきたんですよ。

3. なぜ?大通東1丁目・2丁目の「一体再開発」が進まない理由
今回の解体工事は、2026年11月末まで続く予定となっています。
劇場が更地になることで、いよいよ周辺の再開発が動き出すのか注目されますが実はこのエリアの一体再開発計画は大きな足踏み状態が続いています。
もともとの計画では、劇場跡地だけでなく、隣接する「北海道電力(ほくでん)本店ビル」や「北海道中央バス札幌ターミナル」なども巻き込み、大通東1・2丁目エリアを一体的に再開発する構想でした。
高さ120メートルを超える高層複合ビル(ホテル、オフィス、商業施設、バスターミナル)を建設し、大通公園を東側へ約100メートル延伸して大規模なオープンスペース(緑地)を設けるという2029年度の竣工を目指す壮大なプロジェクトです。
ほくでん本店ビルは1956年、中央バス札幌ターミナルは1966年に建築されたもので、建物の老朽化は著しく建て替え自体は急務とされています。それにもかかわらず計画が遅れている背景には、以下の現実的な問題があります。
- 建築資材の高騰と人手不足: 物価高や建設業界の労務環境の変化により、総事業費(当初試算で530億〜590億円)が大幅に膨らんでいること。
- オフィス需要の変化: コロナ禍を経てリモートワーク等が普及したことで、事業内容やスケジュールの慎重な再検討が必要になったこと。
- 代替オフィスの確保: ほくでん本店には約1万人もの職員が勤務しており、工事期間中にそれだけの規模のオフィスを確保する難しさがあること。
- 周辺の動線事情: 札幌駅前のバスターミナルが現在工事中であるため、冬場のバス待ち等で重要な役割を果たしている東1丁目のターミナルを同時に工事へ回しにくいという側面があること。
こうした複雑な事情が絡み合っているため、劇場の解体だけが先行して進む一方で、周囲を巻き込んだ全体のグランドデザインについては、いまだに具体的な着工の目処が見えてこない状態が続いています。

まとめ:創成川イーストの今後の動きに注目
たくさんの拍手と感動の涙が詰まっていた劇場が、重機の手で静かに取り壊されていく姿を見るのは、やはり寂しいものがあります。
思い返せば、札幌市内では2022年頃から4プラや中央区役所、ホテルオークラなど、昭和を支えた大型ビルの「解体ラッシュ」が立て続けに起こっていました。今回の四季劇場の解体も、変わりゆく札幌の大きな新陳代謝の一幕と言えるのかもしれません。
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創成川イーストエリアの未来を握る、大通東1・2丁目の大規模再開発。
劇場の解体工事が終わる2026年末以降、この広大な一等地がしばらくの間どのように扱われるのか。
そして、膠着状態にある計画に新たな動きが見られるのか。この東1丁目の再開発が進めば、東2丁目に計画されている「ニトリの美術館を中心とした複合施設」の計画も連動して動き出すと予想されます。
かつて札幌の街に文化の灯をともしてくれたこの場所が、これからどんな未来の街並みへと生まれ変わっていくのか。今後もその動向をじっくりと注視していきたいと思います。
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