地下鉄延伸では追いつかない、札幌の交通の現実
札幌ではここ数年、地下鉄延伸の話題がたびたび浮上しています。
街が広がり、人の流れが変わる中で新しい駅や路線が必要ではないかという声が出るのは自然なことです。
一方で、そうした議論を現実に照らしてみるといくつかの課題も見えてきます。
素人でも簡単にわかることとしては、新しく路線を伸ばすためにトンネルを掘ったり新しい駅を一つ造るだけでも莫大な費用がかかるということ。
でも、すでにある地下鉄駅の老朽化対策やバリアフリー化は十分に進んでいるとは言えません。
エレベーターが少ない駅、乗り換えが分かりにくい動線など日常的に感じる不便さが残ったままです。
限られた予算の中で新駅建設を進める前に、まず足元の使いにくさをどう改善するのか。その問いは避けて通れないように思います。
また、札幌の交通を考える上で冬の問題は欠かせません。
毎年のように大雪が降り、バスやJR、道路交通が乱れます。
大雪による混乱は、もはや特別な出来事ではなく毎年起きる「想定内の事態」です。
それでも抜本的な対策は後回しにされ、「仕方がない」と受け止められてきました。
しかし高齢化が進む中でこの状況をこのまま続けてよいのか、考える時期に来ているのではないでしょうか。
なぜ今、札幌で「新たな公共交通システム」が検討されているのか
こうした背景の中で浮上してきたのが新たな公共交通システムの構想です。
これは、地下鉄でも従来型のバスでもない、第三の選択肢とも言えるものです。
大規模なインフラを一気に整備するのではなく、実証実験を重ねながら街に合った形を探っていく。
その柔軟さが特徴とされています。
地下鉄のような高コストを避けつつ、移動のしやすさや定時性をどう確保するのか。
その模索の中で、新交通という考え方が出てきました。
引用:札幌市
バスや市電と何が違うのか、そしてデジタル化の課題
新交通システムは、見た目だけを見るとバスと大きく変わらないように感じます。
しかし、定時性を重視した運行や複数の車両を組み合わせた柔軟な運用、まちづくりと一体で人の流れを生み出そうとする点など考え方には違いがあります。
メリットとしては以下。
- 「専用レーンで渋滞の影響を受けにくい」
- 「車両を連結して輸送力を調整できる」
- 「地下鉄ほどの建設費がかからない」
また、若者にはメリットになりますが高齢者にはデメリットにもなりうる「デジタル技術の活用が前提」となることへの不安もあります。
キャッシュレス決済やアプリによる情報提供は便利ですが、高齢者がおいていかれてしまわないかという懸念は無視できません。
デジタルを使えば便利に、使わなくても今までに近い感覚で使える選択肢が複数あることが大事かなと思います。
その選択肢があってこそ、新しい交通は多くの人にとって身近な存在になりますよね。
今のところ2030頃の本格運行開始を目標として検討がすすめられています。
ただし現段階では実証実験やデザイン検討が中心で、最終的な整備計画が確定しているわけではありません。
札幌の交通で本当に優先すべき動線とは
交通の話題では、新幹線が注目されがちですが、日常生活や観光の現場でより重要なのは新千歳空港と札幌駅をどう結ぶかではないでしょうか。
大雪で飛行機が飛ばず、新千歳空港で一夜を過ごす人たちの姿を見るたびに気の毒に感じます。
空港内の対応だけでなく、市内までの動線全体をどう強化するのか。
ここにはまだ工夫の余地があるように思います。
札幌の大きな強みとして欠かせないのが、地下空間の存在です。
冬になると、地上は吹雪や路面の凍結で思うように歩けない日が続きます。
そんな中でも、地下通路があれば天候に左右されずに移動でき買い物や通勤・通学のストレスが大きく減ります。
実際、地下歩行空間や地下街を使うと「外の天気は荒れているけど、街はちゃんと動いている」という安心感がありますよね。
これは、雪国の都市としては大きな強みだと思うんです。
ただ、現在の地下通路は“点”として存在している場所もあり行ける範囲にはまだ限りがあります。
もしこれを“線”としてつなぎ、駅から主要施設、商業エリア、バス停などへ自然に歩いていけるようになれば冬の移動のしづらさは大きく改善されます。
高齢者や子ども連れにとっても、段差や凍結を気にせず歩ける動線は大きな助けになりますし、観光客にとっても「冬でも歩ける街」という印象は安心感につながります。
地下空間をどう広げ、どうつなげていくか。これは新しい交通システムと同じくらい、札幌の未来の移動を左右する大切なテーマだと感じます。
札幌で誰もが無理なく使える交通を目指して
地下鉄を利用していると、南北線と東西線では“使いやすさ”に少し違いを感じることがあります。
たとえば、東西線のほうが地上と地下をつなぐエレベーターやエスカレーターが多く、乗り降りがスムーズに感じられる場面が多いのではないでしょうか。
最近の分譲マンションが東西線沿線に多いと言われるのも、単に立地の良さだけではなくこうした“日々の移動のしやすさ”が評価されているからかもしれません。
毎日のことだからこそ、小さな使いやすさの積み重ねが暮らしの満足度につながります。
移動のしやすさは、路線そのものの速さや距離よりも、駅から地上へ、そして街へと自然につながる“動線”がどれだけ整っているかに左右されます。
段差が少ない、迷わない、寒さを避けられる――そんな当たり前のようで大切なポイントが、生活のしやすさを大きく変えてくれます。
だからこそ、新しい交通に求められるのは派手さやスピードだけではありません。
高齢の方、ベビーカーを押す人、観光で訪れた人など、立場の違う誰もが無理なく使えること。
札幌の交通に必要なのは「遠くへ速く行く路線」よりも、「冬でも迷わず、無理なく移動できる動線」なのかもしれませんね。
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