「流雪溝」設置は地域住民と協業
今期の札幌の冬は大雪に見舞われています。
札幌市は様々な雪対策をしていますが、そのうちの一つに「流雪溝(りゅうせつこう」があります。
流雪溝とは、道路の下に水路を設けてそこに河川水や海水、下水道処理水等を流して雪を河川まで運ぶものです。
札幌では河川水では冷たすぎて凍ってしまうため下水道処理水等を使用しています。
引用:札幌市
流雪溝は幹線道路沿いにあることが多く冬の道路環境を改善して車のスムーズな運行に必要なものとなっています。
周辺住民がルールを守って流雪溝に雪をいれて除排雪してもいいということになっています。
流雪溝のデメリット
流雪溝の排水ゲートや水位、排水ポンプ等の維持管理は札幌市が行っています。
そしてここが大事なデメリット
「流雪溝が近くにある地域では、基本的に札幌市からの除排雪が入りません」
※道幅10m以上の幹線道路には入ります
札幌市と地域(町内会等)・除排雪業者とがパートナーシップ(役割分担)をしており、地域で「管理運営協議会」を立ち上げて投雪計画やルールづくりを行い管理運営しているんです。
「施設は造るから除排雪は地域でやってね」という感じです。
札幌市としても除排雪すべてに市税を使用するのも限界がありますし、担い手が多い若い世代が多かった当時はそのような形がベストとなったのでしょう。
流雪溝は、1970年代~90年代に道内で整備が進んだものです。
排雪の時に雪を運ぶ手間がはぶけることや除雪車が入れない路地に設置できるということから自治体関係者からは「夢のインフラ」と言われる時代もあったそうです。
ところが高齢化がすすみ、流雪溝まで運ぶことができる担い手(ボランティア等)が減ってきたことや町内会への未加入者が増えていることなどで地域の負担増になっていると考えられます。
そのような理由もあり、今期のような大雪が降ると流雪溝が雪に埋もれる(未使用)、つまる事態になってしまいます。
埋もれてしまうといったい何かわからない状態です。
人が減るほど運用厳しく
ボランティアの担い手がいないという面では、札幌はまだいい方かもしれません。
道内の地方都市ではそれが顕著にでてしまっており、高齢化とともに利用者の作業負担がどんどん重くなっています。
人手不足に加えて燃料費高騰も問題となっています。
札幌市は昨冬から、「降雪量10センチ以上」としていた除雪ルールを「20センチ以上」に引き上げています。
なぜかといえば、生産年齢人口(15歳以上65歳未満の人口)が減少してきているので税収ももちろん減ってきているからです。
いままでと同様の除排雪をするとなるとかなり負担増となってしまいます。
入ってくるお金が減るのに除排雪ばかりにお金をかけてはいられないという感じですね。
少ない予算で、将来にわたって効率的な除雪体制を探る試みだったのですが、大雪が続いた札幌で市民の不満や生活への支障が明るみにでてしまいました。
人口減で税収が減り、高齢化で医療・福祉分野などの公的負担も増える中、自治体は簡単に除雪費用を増やせなくなったんですね。
ただ現在の除排雪の状況では、いずれは立ち行かなくなってしまいます。
住民税・市民税負担が増えないことを祈るしかない・・です。
まとめ
観測史上最多記録を出してしまった札幌の大雪。
除排雪は基本的に自助、共助、公助の役割分担で成り立っていますが、今回ばかりはその機能もカバーできないくらいの積雪量。
除雪ができる住民自体の減少で行き詰る状態。
札幌市内に28カ所ある雪堆積場も満杯で閉鎖している場所もあるそうです。
いつまで雪が降り積もるのかはお天気のご機嫌をうかがうしかありませんね。
写真:街灯が埋もれそうな高さの雪堆積場