「JR北海道って赤字じゃなかった?」
そんなイメージを持っている人は多いと思います。
実際、ここ数年は大きな赤字が続いていました。
それなのに、なぜ莫大な費用をかけて北海道新幹線は札幌まで延びるのでしょうか。
「そもそも採算が合うの?」
「赤字なのに大丈夫なの?」
そう感じるのは、とても自然な疑問です。
ただ、この話は“JR北海道の経営”だけで見ると、少し本質を見失ってしまいます。
北海道新幹線は、単なる鉄道会社の事業ではなく、もっと大きな視点で考えられているプロジェクトです。
「赤字」と言われるJR北海道の実態
まず、現状を整理しておきます。
JR北海道はコロナ禍で大きな打撃を受け、数百億円規模の赤字が続きました。
実際のここ数年の決算を見ると、その流れがよく分かります。
- 2020年度:約▲408億円
- 2021年度:約▲344億円
- 2022年度:約▲170億円
- 2023年度:約+33億円
- 2024年度:約+46億円
このように、コロナ禍で大きく落ち込んだあと、徐々に回復していることが分かります。
ただし、ここで注意したいのは「黒字の中身」です。
JR北海道の鉄道事業は、人口減少や利用者減少の影響を強く受けており、構造的に厳しい状況が続いています。
そのため、現在の黒字は本業の鉄道だけで生み出されているものではなく、支援や関連事業によって支えられている側面が大きいのです。
つまり、「黒字にはなったが、鉄道で稼げているわけではない」というのが実態です。
そのため、コスト削減や効率化も同時に進められています。
過去には、JR北海道の経営効率化の一環として「みどりの窓口」の縮小についてもまとめています。
新幹線は“JRのための事業”ではない理由
ここが一番重要なポイントです。
北海道新幹線は、JR北海道が自社の利益のために進めている事業ではありません。
国が進めるインフラ整備として、地域全体の経済効果を見込んで整備されています。
建設費の多くは国や自治体が負担し、JRは主に運行を担う立場です。
例えば、新幹線によって人の移動が増えれば、
・観光客の増加
・ビジネス往来の活発化
・企業進出のきっかけ
といった形で、地域全体に経済効果が波及していきます。
こうした“広い意味での利益”まで含めて判断されるのが、インフラ整備としての新幹線なのです。
つまり、新幹線は「会社の採算」ではなく、社会全体として意味があるかどうかで判断されているプロジェクトなのです。
なぜ札幌まで延ばす必要があるのか
では、なぜ札幌まで延伸する必要があるのでしょうか。
答えはシンプルです。
札幌まで来て、初めて“路線として成立する可能性が出る”からです。
現在の終点である新函館北斗は、人口規模や経済規模の面で限界があります。
一方で札幌は、約200万人の都市圏を持つ北海道の中心です。
・ビジネス需要(出張・通勤など)
・観光需要(国内外からの来訪)
・人口規模(安定した利用者数)
これらを考えると、
「札幌に繋がるかどうか」で、路線の意味は大きく変わります。
中途半端な区間では利用が伸びず、むしろ“つながらないこと”の方がリスクになるのです。
札幌延伸に向けた整備も、すでに現実として進んでいます。
例えば、車両基地の整備など、関連するインフラは着実に動き始めています。
赤字でも進める理由とは
ここまでを整理すると、見えてくるものがあります。
北海道新幹線は、JR北海道単体の利益では判断されていません。
地域経済や人の流れを支えるインフラとして、札幌までつながって初めて価値が出るという前提で進められています。
もちろん、
・建設費の増加
・工期の遅れ
・並行在来線の課題
など、リスクも抱えています。
それでも進める理由は、将来の北海道にとって“必要な基盤”と考えられているからです。
まとめ
JR北海道が赤字であることと、新幹線を延伸することは、一見すると矛盾しているように見えます。
しかし実際には、「会社の経営」と「社会インフラ」は別の軸で考えられているものです。
北海道新幹線は、JR北海道単体の利益ではなく人の流れや地域経済といった、より広い視点で整備が進められています。
そしてもうひとつ重要なのは、札幌まで延びて初めてその効果が問われるという点です。
つまりこの計画は、すでにある課題を解決するというよりもこれからの北海道の交通や経済のあり方をどうしていくのかという選択でもあります。
札幌まで延びたとき、この新幹線が本当に意味のあるインフラになるのか。
その評価は、これからこの路線をどう使っていくのか——
私たち自身に委ねられているのかもしれません。
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